最近、こんなツイートを書いてた。
「貸し倉庫とかシーズンオフにコート預かるクリーニングとかって、考え方がITのクラウドと近い気が。」
「運用コストの点で「所有したら負け」っていう場面がリアルで増えている気が。運用代行のサービスが安くなってるからか。不動産、車、台所、書籍…データも?」
いくつか返事をもらったりして少し考えたからメモ。
「私の代わりに保持・メンテしていてくれて、私のほしいときに良い状態で使わせてくれる」というサービスにどんなものがあるか考えてみた。そのブツの所有権によって分けるとこんな感じなのではないか。
保持されるブツの所有権は私にあるグループ
- 季節衣類預かり、貸し倉庫等、一定時期使わない生活品系
- 絵画、骨董、高級車等、財産的価値を守って保持する系
- ペット預かり
- 人間を対象にするなら(この場合所有権ではないが)、保育園、寮、デイサービス
ITでは
↑これらの「売り物」は保持サービスだ。
私が「自分のものとして所有したい」+「身近に置いて保持運用したくないorすることがままならない」ものへのサービス。
保持されるブツの所有権は保持者にあるグループ
- 貸し衣装
- レンタカー、レンタサイクル等乗り物系
- 賃貸住宅、貸し別荘等住まい系
- ホール、会議室、応接室、宴会場、ホテル、キャンプ場等空間系
- 銭湯、カラオケ、ネットカフェ、公衆電話等サービス系
- 人間を対象にするなら(この場合所有権ではないが)、レンタル家族、ひょっとしてキャバクラやホストクラブ、風俗
ITでは
- 図書館、データ系(情報貸し出し:無料も多々:これはクラウドと呼ばれてないようだ)
- 処理エンジン系(クラウドその3 SaaSユーザにとってのサービス。ブログ系の中でもゲームやポータル系ソーシャル系の「機能部分」、場としての価値、はこの項目に該当か?)
↑これらの「売り物」はブツの貸し出しというサービスだ。
私が「所有したくはないor所有がままならない」が、「望むとき自由に使いたい」ものへのサービスだ。
ちょっと別もの:所有したらその場で消費するが、それまでの保持がサービスとなるグループ
- 冷蔵庫の代わりに自動販売機やコンビニで冷たい飲料、食料(その延長でファーストフードサービス)
- 常に鞄に入れておくかわりに、コンビニで食品や日用品(ビニール傘やちり紙ハンカチ、電池…)
- (Amazonプライムなどの登場により、この範囲は広まりつつあり、いわゆる消えモノ以外も対象になってきてる。それと対になって即時に引き取るサービスも出てきそう…ブックオフの宅配買取とかその範疇か)
IT系のこれらってあるか?
- ITのサービスや情報の販売等は、ほぼリアルタイムで行われているため、わざわざ言うまでもなく、大半が即時販売という価値を含んでいるから言わなくていいみたいだ。
- インフラの即時販売としては、携帯の契約を出先ですぐできるなんてのが入るかな。消えモノ的なインフラってある?今そこはないかもしれない。電池切れたらそれまでよの使い捨て簡単端末とか?(写るんですの携帯版みたいな。犯罪の温床になりそうだから却下もしくは機能限定しまくりか。廃止になったプリペ携帯がここか。今なら、白ロムというのがここか)
↑これらの「売り物」はブツの即時販売というサービスだ。
私が「所有したくなったらいつどこに限らず所有し、使いたい」ものへのサービスだ。
こうしたサービスがあるから、
「自由に使いたい」なら「事前に所有するべし」という縛りがなくなってきている。
なぜこれが成り立つようになったかは、こういう理由によるものだろう。
(ブツの種類やサービスの種類、地域等によって普及度合いは大幅に差はあるだろうが)
- 各種ブツの安定供給が保障され、供給ぎれのリスク回避のために所有しつづける必要が薄れた
- 各種ブツについて、保持、運用、即時提供のコストが業者の工夫によって下がった
- 利用者にとって精神的な縛りがなくなってきた
じゃ、私はそれでどうしたいか?
望むとき自由に使いたいものはたくさんある。
鍵のかかる空間、電気ガス水道、食料、衣類リネン類寝具、情報、インターネット常時接続インフラと端末などだろうか。
あたりまえすぎて書けていないものがある気がする。
所有したいものは?
じつはブツはほとんどがレンタルでもよいのかもしれない。安定して供給されるのであれば、所有しておく必要はない。
所有したいのは、替わりの利かないもの。
- 人間関係
- ライフログ
- これまでに自分が生産した価値と自分を紐付ける情報
じゃ、究極は、情報なのか。上記のような情報と、肉体の自分を紐付けるIDがあって、あとはお金(の所有情報)があれば、すべてをレンタルで私は生きていけるだろうか?IDの入ったチップを手首に埋め込んだら、所有ブツを全部換金して、着のみ着のままで街に出て、平気か?
…移行ストレスは強そうだけど、生きていけそうだ。そして、ほしいものを借りて、そのインフラを社会に出て働く生活基盤にして、なにか生産的活動をし、その結果収入を得て、ほしいものを借り(換え)続けて、生きていくんじゃないだろうか。
そもそも、自分の体が最長120年レンタルだし。気に入った棲家があれば20年30年とレンタルすることで、動物的な「自分の巣」感覚も満足させられるだろう。
だけど私は今、いくつもブツを所有している。それはなぜだ?
- まだレンタルサービスに対応してないブツだから(家の中のコンロだけレンタルとか、ニッチなガジェットのレンタルとかはない)
- レンタルや保持のコストが誰の得にもならない種類のブツだから(普段着は保守頼むより所有→だめになれば買い替えのほうが安い。鉛筆はレンタルする甲斐がない。)
- 所有しておかないと消えてしまう(絶版レア物の本とかグッズとか)愛着のあるものを保持したいから
- もう所有してて、そうなると所有しつづけるほうがコストかからないから
む。この4つめってなんかアヤシイ。気のせいなものもあるかもしれないなあ。
…とはいえ「できる」と「やるべき」はイコールではない。今、暮らしの大部分をレンタルにすることはできるが、だからあなたも私もやるべきよとは思ってない。移行による動物的なストレスの予感も大きいし、純粋にコストの問題で想像して、まだ所有が勝つ場合も多々ありそうだ。それと世の中の動きによっては、所有が適切な状態に逆行することもあるかもしれないので。
このあとは雑感。
ノマドスタイルで仕事をしている人々がすでにいる。この人たちは「できる」を検討し「やるべき」と判断して踏み切った種族なのかも。農耕民族(焼畑じゃなくなった後の)は所有を基本とする文化だと思うが、私たちは狩猟の文化を試し始めているのかもしれない。
家族のメンバーを保持することについても少し考えてしまった。保持のコストがかかりすぎて関係解消ということは精神的経済的にありえる。自分に替わって配偶者のいろんな分野の幸福を保持してくれるサービス、というのがあったら、使いたいか?いや、関係を保持したいのは相互にいろんな分野の幸福を育て合いたいからであって、そこ代行はないよなあ。(一部代行はあるかもね。ずっとお喋りしていたい人へコンパニオンを提供するとか、もっとアレなサービスも、必要に応じ。)すべてを代行依頼したいくらいなら、関係は適切な条件に契約しなおすのが正しそうだ。
(子どもの育成については話が別になりそうだ。自立できない、対等でない関係についてはここではうまく書けない…)
今回考えてみた一番の収穫は、私が「所有していたい」最後の砦はソーシャルな情報だ、ということかな。